行ってみんさい!
食べんさい店
地域と共に紡ぐ伝統の最中
県産大納言小豆で装い新たに
広島食材を使い地元の食の魅力を伝える「食べんさい店」。
和食、洋食、中華など数あるジャンルの中から、今回は菓子をピックアップ。
福山市沖野上町に店を構える、大正11年創業の「お菓子処 三河屋」を紹介します。
代々受け継がれてきた伝統の最中「おもだか」を「勝なりもなか」としてリニューアル。
広島県産大納言小豆を使用した王道の味わいが、県内外のファンを魅了しています。
今回の推薦者
お菓子処 三河屋
〒720-0825 福山市沖野上町4-15-27
TEL:084-923-4890
初代の石蔵圭三さんが、パン屋からスタートした「お菓子処 三河屋」。かつては福山市熊野町で店を営んでおり、当時水源地の工事に携わっていた作業員たちが、連日パンを求めて並ぶ一軒だったという。昭和の時代に入り、菓子店に方向転換、本通り商店街に暖簾を掲げるようになった。戦前戦後の甘いものに飢えた人たちの舌と心を満たしたいと努力を続けた。一時期は大型商業施設の出店に対抗するため、6軒の商店と力を合わせてショッピングセンターを設立。全国でも先進的な試みだった店舗は大いに賑わい、菓子も飛ぶように売れた。
現在は工場を併設する沖野上町にある本店を中心に、デパートやホテル、キオスクなどでお菓子を販売。三代目の石蔵和司さん、妻の美智子さん、娘の淳子さんが、一家総出で店を切り盛りする。
「昔から言い伝えられてきたのは、きちんとした材料を使い、本当に良いものを提供すること。製法は新しい手法素材をどんどん取り入れ、すべてのお菓子をほとんど手作りしています」と石蔵さん。使用する材料は、厳選した国内産小麦粉や小豆、世羅町産の卵など。余計なものが一切入っていない品々は滋味深く、どこか懐かしい風味のものばかりだ。
「また、私たちが心がけているのは、菓子を通じて地元の歴史や風土を伝えていくことだと考えています。例えば代表商品である『むろの木』は、潮待ちの港として栄えた鞆町のむろの木を題材にしています。歌人、大伴旅人が歌にも詠んだ鞆町の風情やむろの木に寄せた思いを菓子に込めて残していきたいと思っています。平和の象徴、福山の市の花であるバラをモチーフにした商品も複数作っています」。
いちおしメニュー
使用している県産品
広島県産大納言小豆
平安時代から江戸時代まで、一大小豆生産地だった中国山地。伝統ある小豆の栽培を復活させたいと、JAや広島県菓子工業組合、生産者が連携し2017年から三次市や世羅町などで栽培をスタート。その後広島市へも栽培地が拡大し、現在は県内で約6~7tを生産する。特に2021年に実用化に至った大納言小豆は、粒が大きく腹切れしにくいのが特徴。皮が柔らかく食味豊かで、次世代の特産品として期待されている。
「リニューアルが功を奏し、商品を手に取ってくれるお客さまが随分増えました。ネーミングのわかりやすさに加え、餡の美味しさがアップしたことも理由のひとつだろうと思います。進物に選ばれる場合が多いので、ぜひ県内外の方に『勝なりもなか』を食べていただき、広島県産小豆のことや、福山というまちの歴史、魅力を知ってもらえたら嬉しいです」。
店にはほかにも、上質な赤餡と白餡で蜜煮の栗を一粒ずつ贅沢に包んだ饅頭「仙酔」や、ミルク風味の生地に世羅の卵を使用した黄身餡を包んだ「ばらの街、福山」、姉妹品となるミルク餡の焼き菓子「マミーローズ」など、福山にちなんだ品がずらりと並び、思わず目移りするラインナップだ。
今後の目標について、「広島県産小豆を使った商品をもっと増やしていきたいし、新しいことにも挑戦したいですね」と意気込む石蔵さん。次代を担う娘の淳子さんは、店の原点にかえってパン作りに精を出したり、地元のイベントに新作の菓子を携えて出店するなど、店に新しい風を吹かせているのだという。
本店のある沖野上町の通りには、今日も早朝から菓子を焼く甘い匂いがふわりと立ち込める。地元への愛と菓子作りへの真摯な姿勢が感じられる「お菓子処 三河屋」は、これからも間違いなく、多くの人から支持されていくに違いない。
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世羅鼓
〒733-0834 広島市西区草津新町2-26-1 アルパーク 東棟 B1F
TEL:082-501-1123 -
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〒722-0035 尾道市土堂1-17-15
TEL:050-3719-4054 -
藤い屋
〒739-0588 廿日市市宮島町1129
TEL:0829-44-2221